ベンジャミン・フランクリンは18世紀アメリカの科学者で、政治家でもありました。彼はまた、人間心理への理解が深い人でもありました。
あるとき、議会で激しくフランクリンを非難する人がいました。フランクリンはこの人との関係を良くしようと思ったそうです。こんなとき普通の人物なら、お金や物を贈るなど、相手の利益になることをしてあげるでしょう。ところがフランクリンはそういうことはしませんでした。(67 )、彼はこんな内容の手紙を送ったのです。「あなたの本を貸してくれませんか?」
フランクリンはそうやってお願いして、その人から本を借りました。彼はその後、再度その人から本を借りました。その頃には相手の態度はすっかり変わってしまい、フランクリンにむしろ好意を持つようになっていたそうです。
このエピソードは有名で、これに基づいた「フランクリン効果」という概念もあります。それは、人がある相手に親切なことをした場合、その人自身がその相手に対して好意を持つようになる、という心理法則を指します。議会でフランクリンを非難した人が持っていた敵意は、フランクリンに対して親切な行為を行ったこと(本を貸したこと)と矛盾します。心の中に発生したこの矛盾を解消するために、その人はいつの間にか自分の敵意を好意に置き換えてしまったわけです。
このフランクリン効果はすぐ応用できます。たとえばあなたが苦手な怖い先生の所に行って、「この問題の解き方を教えてください」などとお願いしてみるのです。その先生が問題の解き方をあなたに教えてくれているうちに、いつの間にかあなたに好意を持ってくれる可能性は高いです。
66.
文中の「そういうこと」が指すのはどれか。A.相手の利益になること |
B.相手を激しく非難すること |
C.相手との関係をよくすること |
D.人間心理への理解が深いこと |
67.
文中の(67 )に入れるのに最も適当なものはどれか。A.そのように | B.それはさておき |
C.その代わりに | D.そうはいうものの |
68.
文中の「フランクリン効果」の指すものとして、正しくないものはどれか。A.人は、自分の心の中にある矛盾に耐えることができない傾向を持つ。 |
B.人がある相手に親切にしてあげた場合、その後、その相手はその人に対して敵意を持ちやすくなる。 |
C.人がある相手に良いことをしてあげた場合、その後、その人自身が相手に対して 好意を持ちやすくなる。 |
D.人は、自分の心の中にある矛盾を解消するため、自分の持っていた敵意を好意に 置き換えてしまうことがある。 |
69.
文中の「この矛盾」とはどんな矛盾か。A.自分の敵意がむしろフランクリンの親切につながった、という矛盾 |
B.普通の人間なら相手の利益を図るのに、フランクリンはそうしなかった、という矛盾 |
C.自分の心の中で、フランクリンに対する敵意を好意に置き換えてしまった、という矛盾 |
D.自分が敵意をもってフランクリンを非難したことと、親切にフランクリンに本を貸したことの間の矛盾 |
70.
この文章で筆者が最も言いたいことはどれか。A.フランクリンは人間心理への深い洞察力を持った人物であった。 |
B.苦手な先生の前で積極的にふるまえば、きっと最高の先生になる。 |
C.人間心理には、自己の中に一貫性を求め、不協和性を解消しようとする傾向がある。 |
D.フランクリンのような偉大な人物には、他人の敵意を好意に変えることすらできる。 |