人間関係を変化させるために嘘が使われる、おもしろい例があります。
約束の時刻に遅刻しそうなとき、あるいは遅刻したときに嘘の言いわけをする人は少なくありません本当は寝坊したのに、「電車が遅れまして」「バスに乗ったら道が渋滞していて」などと言って叱責を逃れようとします。
(ア)、この遅刻の言いわけ、荒唐無稽なものになればなるほど、遅刻したことを叱られなくなるという報告があります。
「すみません、寝坊しました」では、遅刻したことを責められます。」
「電車が遅れました」「道が混んでいたので」も、もっと早く家を出ればいいと言われるでしょう。
ですが「隣の家で爆発があって、その勢いで祖母が出産しまして」くらいのメチャクチャな言いわけをすると、もはや遅刻については叱られなくなります。
論点は遅刻したことではなく、その言いわけが嘘か本当なのかに移ります。もちろんあからさまな(明显的)嘘をついたことでは叱られますが、遅刻そのものはウヤムヤ(含糊不清、不了了之)になるのです。
あきらかにバレる嘘、やたらと大袈裟な嘘は、相手との共有を目的にした嘘です。それは、嘘の種類を分類すれば「娯楽」に近いものです。そんなふうに娯楽を提供することで遅刻がごまかせるのでしたら、一度くらいは試してみてもいいんじゃないでしょうか。
どうせこの世には嘘しかないのです。
だったら誰かに害を与えない限り、相手といっしょになって、この嘘の世界に大きな嘘を積み上げるほうが楽しいし、さらにそれが誰かの希望になるのだとすれば、お互いに幸せな気分になれそうです。
僕はそんなふうに考えています。
66.
文中の(ア)に入れるのに最も適当なものはどれか。67.
人間は嘘をつく目的は何か。A.人間関係を変化させる | B.相手の叱責を逃れようとする |
C.相手に遅刻した真実を知られたくない | D.相手を怒らせたくない |
68.
「遅刻そのものはウヤムヤになるのです」とあるが、それはなぜか。A.遅刻の言いわけは相手と共有しているから |
B.問題点は遅刻の言いわけの真実性に移るから |
C.遅刻したときに嘘の言いわけをする人は少なくないから |
D.相手に遅刻の言いわけを理解してもらえるから |
69.
文章の内容に合っているのはどれか。A.人との良好な関係を保つために、嘘をつくことはやむを得ない行為です |
B.遅刻したとき、相手の叱責を避けるために嘘の言い訳をする |
C.メチャクチャな言いわけをすると、相手との関係が悪くなる |
D.遅刻した理由を正直に話せば、相手に叱られることは絶対にない |
70.
筆者の考えに合うものは次のどれか。A.メチャクチャな言い訳は、何度使っても構わない |
B.世の中は嘘だらけだから、人間関係を維持しようと努力する必要はない |
C.人が嘘をつくのは、自分の嘘が誰かの希望になることがあるからだ |
D.嘘をつくことはある程度人の心を楽しませると言える |