1 . 人は二足歩行により前足を自由にしました。つまり、手を持ち、そのことで自然物を道具にすることができました。さらに、自らの手でその道具を改善することができました。そして、新しい素材で新しい道具を生み出すことができます。このプロセス、すなわち道具を作り出すことができたという点こそが、ほかの動物と明らかに違い、区別がはっきりすることになったと言われています。サルは身の回りにあるものを道具として使うことができますが、作り出すことはできないのです。
そして、ここからが大事なところです。道具によって、自分一人あるいは子どもを養うことばかりでなく、働けなくなった、つまり、食べ物を自分で得ることができなくなった年老いた親を、人は養うことができるようになります。親の面倒を見ることこそが、人が他の動物と決定的に異なる点です。
① 、以前は今のような長寿が約束されたわけではないので、働けない年齢になったら基本的には自然に死んでいくというのが大部分でしたが、それでもいわゆる生産不能になった高齢者たちも共存できる社会を、人類はずいぶん前から持っていたようです。つまり、道具の利用と開発によって、人は生産者と後継者以外も生活できる余剰生産が可能になり、老親たちが生存できたわけです。
職業、あるいは労働などという概念ができたのは、長い人類史の中ではつい最近のことです。このような理解に立つと、いわゆる生産能力がない人や乏しい人が暮らせる社会こそが、人類が長年求めてきた夢の社会なのです。豊かな社会とはこの夢が実現した社会のことだと私は確信しています。
1.
筆者は人とほかの動物はどんな点で決定的に違うと言っているか。A.二足で歩行する点 | B.言葉を話す点 |
C.道具を使う点 | D.親に食べ物を与える点 |
2.
文中の① に入れるのに最も適当なものはどれか。3.
「生産者と後継者」とあるが、何と何を指しているか。A.老親とその子 | B.老親の子と孫 | C.老親とその兄弟 | D.老親の子とその兄弟 |
4.
筆者が考える理想的な社会はどんな社会か。A.年寄りが大切にされる社会 |
B.健康で、長生きができる社会 |
C.老親、その子と孫が共に働ける社会 |
D.働くことができない人が暮らせる社会 |
5.
文章の内容と合っていないのはどれか。A.人間は道具を作り出すことができるが、サルはできない |
B.食べ物を自分で得ることができる人こそ長寿できる |
C.働けない人類は年齢になったらほとんど自然に死んでいく |
D.道具の利用と開発のおかげで、老親たちが生存できたわけだ |