大変残念なことではあるが、確かに今の日本では障害を持った人々が街の中を自由に動き回るのは困難だし、一人で生活することも難しい。そこで多くの手助けを必要とするのも否めない事実だ。だが、障害者を①そのような立場に追い込んでいるのは「環境」なのだ。
僕は日頃から、「環境さえ整っていれば、僕のような体の不自由な障害者は、障害者でなくなる。」と考えている。例えば、僕がA地点からB地点まで行きたいとする。ところが駅にはエレベーターも付いていない、バスやタクシーも車椅子のままでは利用できないという状況ではA地点からB地点までの移動が不可能、または困難になる。その時、確かに僕は「障害者」だ、
しかし、駅にはエレベーターも付いている。ホームと電車の間も隙間や段差がなく、スムーズな乗り入れが可能。バスやタクシーにもリフトが付いていて、車椅子のまま乗り込めるといった時、そこには障害者はなくなる。一般的には、家を出かける時に玄関で靴を履くが、僕の場合は、靴の変わりに車椅子に乗る。靴と車椅子の違いがあるだけで、自分の力でA地点からB地点まで移動したということに、何の違いもない。「障害者」を生み出しているのは、紛れもなく、②環境の不備なのだ。
障害者を苦しめる物理的な壁を取り除くには、何が必要なのだろうか。僕は、③心の壁を取り除くことが、何より大切だと感じる。乗り物や建物などのハードと呼ばれる部分を作り上げるのは、我々人間だ。その作り手である我々が、どれだけ障害者・高齢者に対しての理解や配慮を持てるかで、ハードのバリアーフリー化は、いくらでも進むだろう。
では、障害者に対する理解・配慮はどこから生まれてくるのだろうか。僕は「慣れ」という部分に注目している。
駅で障害者が困っている姿を見かけた。しかし、どのように声を掛けたらいいのか分からずに、結局、その場をやり過ごしてしまった。みなさんにも、そんな経験がないだろうか。それは、「慣れ」の問題によるためらいにほかならない。
そして、ここで多くの人は、「ああ、どうして自分は声を掛けなかったのだろうか。」と自己嫌悪に陥る。だが、僕はそこで④自分を責める必要はないと思う。普段、街を歩いていて障害者を見かける機会はまだまだ少ない。普段、あまり接していない人々に対して適切な対応をしろと言われても難しいものだ。
(乙武洋匡『五体不満足』より)
1.①「そのような立場」とあるが、説明に適切でないものはどれか。A.街の中を自由に動き回るのは困難であること。 |
B.一人で生活することも難しいこと。 |
C.社会的弱者であること。 |
D.自分の力で移動をすること。 |
A.身体障害者に対する理解や配慮がないうえにいやな顔をしている人もいるような環境。 |
B.自分のそばに身体障害者がいても何の関心も持たず、助けようともしない冷たい社会のこと。 |
C.ホームと電車の間に隙間もあるし、段差もあるから、障害者にとって非常に不便なこと。 |
D.駅にはエレベーターが付いていない、バスやタクシーも車椅子のままで利用できないこと。 |
A.物理的な壁を取り除くこと。 |
B.障害者に慣れること。 |
C.困っている障害者に声をかけること。 |
D.障害者に対して、適切な対応をすること。 |
A.障害者が困っているのは、環境の不備のせいだから。 |
B.あまり接しない障害者にどのように対応すればいいのか分からないのは当然のことだから。 |
C.障害者に声を掛けるか掛けないかは、人の自由だから。 |
D.助けてほしい人が声を掛けるべきだから。 |
A.障害者を取り込む環境さえ整っていれば、障害者でなくなる。 |
B.少なくとも駅のような公共場所にエレベーターのような設備をつけてほしい。 |
C.日本では、環境の不備で身体障害者や高齢者に多くの不便を与える場合は少ない。 |
D.これからハードの環境とソフトの環境の中ではハード面の改善を加速してほしい。 |
A.身体障害者に一言でも優しい声を掛けたら、彼らにとって励みになるから、その面の配慮が必要である。 |
B.障害者に対するバリアーフリー化は政府ばかりでなく、国民全体のこととして考えなければならない。 |
C.積極的に障害者に接して、彼らの苦痛や声に耳を傾けて、バリアーフリー化をさらに進めるべきである。 |
D.物理的な壁を取り除くには心の壁を取り除くことが必要であり、そのために「慣れ」が必要である。 |
相似题推荐
【推荐1】今はまだ、コンピューターは人間が命令しないと動きません。① 将来はコンピューターが自分で考えて動くようになるでしょう。②この技術を使ってロボットを作る計画があります。現在、ロボットだけのサッカーチームを作って、人間と試合をするという研究が進められています。2050年までには、人間のチームに勝てる、強いロボットのサッカーチームができるそうです。
ロボットは、サッカーだけでなく、③ほかのこともできるようになります。ロボットは、例えば火事や海の中など、人間には行きにくい場所に行くごとができるようになります。そして、人間を助けたり資源を探したりすることもできるようになるでしょう。また、将来は、どこの家もロボットを持つようになるでしょう。料理を作るロボット、掃除をするロボット、買い物をするロボットなどができるでしょう。人間の仕事をロボットがするようになったら、人間は何をしたらいいのでしょう。未来の人間にとって、自分が何をするかを考えることが、一番たいへんな仕事になるかも知れません。
1.文中の① には何を入れますか.A.それから | B.しかし |
C.それでは | D.しかも |
A.ロボットが人間と試合をする技術 |
B.コンピューターが人間を助ける技術 |
C.コンピューターが自分で考えて動く技術 |
D.ロボットが料理する技術 |
A.火事や海の中など、人間には行けない場所に行く |
B.人間のために、資源を作ったり、試合をしたりする |
C.人間の代わりに、自分が何をするかを考える |
D.人間のために、どんなことでもやってくれる |
A.もつといいロボットを研究すること |
B.ロボットに自分が何をしたらいいかを考えさせること |
C.ロボットにもつと多くの仕事をさせること |
D.自分が何をしたらいいかを考えること |
A.今のロボットは人間の命令通りに動く |
B.現在のロボットチームは人間と試合できる |
C.未来のロボットは人間に色々なことをしてくれることができる |
D.ロボットが色々なことをしてくれても、人間は自分で考えることが必要だ |
【推荐2】「話す」ことは、基本的にプライペート(注1)な行為である。それに対して、「書くという行為は、話すことのようにその場で消えてしまうのではなく、文字として残る。そのことによって、「書く」ことは公共的(注2)な行為になる。
たとえば、「あいつバカだよね」と言ったとしても、にこやかに笑いながらであれば、話す当人が、バカだと批評している相手のことを貶して(注3)いるわけではなく、①愛情を込め、好意をもって言ったのだと伝わる。
(ア)、それを文章で書いてしまったら、どうだろうか。その場の雰囲気やニュアンス(注4)がかなりうまく表現されていないと、「あいつはバカだ」という言葉がそのまま文字として定着してしまう。話し言葉のニュアンスは、②書き言葉ではかなりうまく表現しないかぎり伝わらない。それが③書き言葉-一文字の怖さである。
(齋藤孝「原稿用紙10枚を書く力」大和書房刊による)
(注1)プライベートな:個人的な
(注2)公共的(こうきょうてき):個人的でなく大勢の人にかかわる
(注3)けなす:悪い点を取り上げて非難する
(注4)ニュアンス:表現などの微妙な意味
1.「バカだ」という言葉が、①愛情を込め、好意をもって言ったのだと伝わるとあるが、どうしてそうなるのか。
A.文字の書き方によって気持ちを示すことができるから。 |
B.表情や言い方によって気持ちを示すことができるから。 |
C.周りの様子に合わせて話し言葉のニュアンスで書くから。 |
D.批評していないから。 |
A.話言葉をちゃんと使えば真の意味が伝わる |
B.書き言葉をちゃんと使えば真の意味が伝わるかもしれない |
C.書き言葉をちゃんと使えば真の意味が絶対に伝わる |
D.話言葉をちゃんと使えても真の意味が伝われない |
A.ところで | B.しかし | C.だから | D.そして |
A.文字だけでは、その場の雰囲気やニュアンスが伝わりにくく、誤解されるから。 |
B.書き言葉の表現は難しいから。 |
C.書いたものは大勢の人が見るから。 |
D.書くときに使う紙がもったいないから。 |
A.書くと文字が残るが、話すのは一時的なものなので、何を言っても問題ない。 |
B.書くほうが、自分の真の気持ちを伝えやすい。 |
C.話すほうが、言葉には表れていないニュアンスを伝えやすい。 |
D.話すことも書くことも、同じだ。 |
【推荐3】「小学一年生は漢字が苦手で、①半数近くが「八つ」を読めず、約3割が「一つ」と書けないことが7日、教員や大学教授らで作る「日本教育技術学会」の漢字習得度調査でわかった。小3以降で書き取りの力が急激に低下することも判明した。
調査ではテレビ視聴時間が「1時間以上3時間未満」のクラスと「書き」の得点(200点満点)を比較したところでほとんど差がないものの、小4.5では「3時間以上が」16点低くなった。
この記事で面白いのは低下するのが漢字の「読み書き」のうち「(ア)」の方だと言うことだ。私もパソコンを多用するようになって、漢字の書き取り能力の低下を実感しているが、「( イ )」より「( ウ )」の方がそれにかける時間が少なくなれば低下が著しいということだろう。
( エ )、引用記事の前半「八つ」「一つ」の間違いは、おそらく子供たちを含めた社会が生活の変化にその原因の一つがあるとも考えられる。機会があれば詳しい私見を述べたいが、簡単にいえば「1.2.3……」を「ひ、ふ、み……」と言う機会が「いち、に、さん……」と言う機会よりも少なくなってきていると思えるからだ。
1.①「半数近くが「八つ」を読めず、約3割が「一つ」と書けない」とあるが、それはなぜか。A.テレビを見過ぎているから |
B.パソコンを多用しているから |
C.子供たちの漢字能力全般が低下しているから |
D.「ひ、ふ、み……」を使う機会が減ったから |
A.ア:読み イ:書き ウ:読み | B.ア:書き イ:書き ウ:読み |
C.ア:書き イ:読み ウ:書き | D.ア:読み イ:読み ウ:書き |
A.しかし | B.なお | C.それで | D.これから |
A.子供たちの漢字能力の低下は、「読み」より「書き」の方が目立つ。 |
B.小学生の半数が「八つ」を読めないのは、本を読まなくなったからだ。 |
C.テレビの視聴時間を少なくすれば、漢字を読む能力はよくなるだろう。 |
D.パソコンの使用が増えると、次第に漢字が読めなくなる。 |
A.視聴時間と漢字能力 |
B.低下する漢字能力 |
C.漢字書き取り能力 |
D.漢字読み取り能力 |