6 . 文化に関する情報を「知識」として与えても、「異文化」に対応する能力の開発にはつながらないのではないかという発想から、「異文化調整能力」が注目されている。ここでは、「文化」を学ぶべき知識として固定的な情報としてとらえる視点は弱い、あるいは少ないと言えしよう。つまり、文化的背景の異なる人同士が出会い、コミュニケーションを行うときには様々な摩擦や障害があるのはむしろ当然で、それを回避する教育ではなく、その困難を乗り越えていく能力を育成する教育が必要であるという視点である。
このような視点は、流動化する社会情勢や多様な人々が共に暮らす多文化共生社会の中で、人々はどのような能力が求められるのかという共通する問題意識である。
(ア)、言語教育や日本語教育においても、異なる文化的背景を持つ人や異なる考え方を持つ人と出会うことが積極的に取り入れられることになる。たとえば、目標言語を母語とする人と母語としない人が共同で課題を解決するようなプロジェクトワーク①や、問題解決学習を重視する言語教育が試みられている。そのプロジェクトワークや問題解決学習の中で、参加者は目標言語を使って異なる意見や考え方を調整したり、新しい考え方を協同で作り上げたりすることを体験する。そこでは、すでに文化Aとか文化Bといった固定的な文化観はなく、流動的な文化、多様な文化を認める視点を参加者はおのずと②学習していくことになる。そのような学習で育成される能力は、異なる他者との関係を築くことができる「対人関係能力」ともいえよう。つまり、最終的には、人と人が理解しあうインターパーソナルコミュニケーション能力③が求められているのであり、その点において日本語教育も言語教育の一つとして、どのような貢献ができるかが問われている。
注释:
①プロジェクトワーク:课题作业
②おのずと:自然地
③インターパーソナル.コミュニケーション能力:个体间沟通能力
1.
文中に「異文化調整能力」とあるが、それは何か。A.異文化に関する情報が与えられたら、それに対応する能力が開発できること |
B.異文化に関する知識を習ったら、それを自分の固定的な情報にさせること |
C.異文化を持っている人に会う時、その人に応じて自分を調整すること |
D.異文化を持っている人に会う時、様々な摩擦や障害が回避できること |
2.
文中に「このような視点」とあるが、何を指すか。A.異文化的背景の人同士とコミュニケーションする時、摩擦や障害などを回避する教育が必要である視点 |
B.異文化的背景の人同士とコミュニケーションする時、摩擦や障害などの困難を乗り越える能力を育成する教育が必要である視点 |
C.異文化的背景の人同士とコミュニケーションする時、他人の異文化を自分の文化と融合させる教育が必要である視点 |
D.異文化的背景の人同士とコミュニケーションする時、人と人が持っている異文化の相違点をなくす教育が必要であること |
3.
文中の(ア)に入れるのに最も適当なものはどれか。A.ちなみに | B.したがって | C.ところが | D.それなのに |
4.
目標言語を母語とする人は共同で解決する課題に参加すれば、どうするか。A.固定的な文化観を持って、異なる意見や考え方を調整しない。 |
B.固定的な文化観を持って、多様な文化を認める視点を学習しない。 |
C.異なる意見や考え方が調整できるが、流動的な文化が認める視点を開発しない。 |
D.異なる意見や考え方を調整したり、新しい考え方を協同で作り上げたりする。 |
5.
文中の「対人関係能力」はどんな能力を指すか。A.異なる他者に習うことができる能力 |
B.異なる他者に習ってから育成される能力 |
C.人と人が理解しあう個人間コミュニケーション能力 |
D.人と人が異なる視点をなくしてコミュニケーションする能力 |