8 . 約束の時間を守らず他人に迷惑をかけるのは悪いことだ、というのは誰もが認める。それなのにどうして私たちはこんなに時間にだらしがないのだろうか。それは、私たち日本人は、時間をムダにしたり、ムダにされたりすることにあまり細かく気にかけない性質であるからだと思われる。十人の会合に、十分遅れてやってきた人は、他の九人の人たちから十分ずつ、合計九十分の時間をうばい取ったわけだが、当人はそれほど重大な誤りをおかしたと思わず、十分ぐらいの時間のムダは、ほとんど気にかけない。これがいけないのだと思う。
(63)これがお金だったら、人々はこんなにのん気にしているわけにはいかないだろう。つまり多くの日本人にとって、時間は、それをすぐお金の値打ちにかえて考えるほど、大切ではないのだろう。しかし、自分にとって大切ではないからといって、他人もそうであると考えることは誤りであろう。だいたいに、時間を正確に守らないのは、忙しすぎる人と、暇すぎる人に多いようである。前者は他人は自分ほど忙しくないだろうから、少しぐらい待ってもらっても許されるだろうと考え、後者は他人にも暇な時間がどっさりあると考えているのである。どちらも自分中心の考え方であることは言うまでもない。
しかしこれからの若い人は、他人の時間を大切にすることを大いに学ぶ必要がある。そうでなければ、満足した共同生活を送ることはできなくなるであろう。それは人々がますます忙しくなり、それだけに自分の時間をいよいよ大切にするようになるからである。
1.
文中の「時間にだらしがない」とはどういうことか。A.時間を無駄にすること | B.時間を無駄にされること |
C.時間の無駄を気にかけないこと | D.他人の時間を大切にしないこと |
2.
文中の「当人」とは誰のことか。A.他人 | B.私たち日本人 |
C.十分遅れてやってきた人 | D.他の九人の人たち |
3.
文中の(63)に入れるのに最も適当なものは次のどれか。4.
文中の「後者」が指すのは次のどれか。A.暇すぎる人 | B.時間を守らない人 |
C.忙しすぎる人 | D.自分中心に考える人 |
5.
筆者の意見と合っているのは次のどれか。A.たいていの日本人は、時間をお金と同じくらい大切だと思っている。 |
B.時間を守らない人ほど、他人には時間を守ることを求めるものだ。 |
C.これからは自分の時間と同じく、他人の時間も大切にしていくべきだ。 |
D.満足する共同生活のためには、何よりも自分の時間が大切である。 |