9 . 私が半年ほど入院した。同じ病室に、完全に寝たきり(卧床不起)になっていた K さんという人がいました。彼の毎日の楽しみは、看護婦さんに「息子から電話があったでしょうか」と尋ね、「あったわ よ」という看護婦さんの返事を聞くことでした。 毎日電話をかけてくる息子さんがいて、いいなあと私は思っていました。ところが、①それがうそであることが、しばらくして分かりました。息子さんからの電話はなく、看護婦さんたちが、かかってきたかのように演じていたのです。それは K さんを励まし、希望を持たせるために、②看護婦さんたちがついたやさしいうそでした。そして、悲しいうそでした。 というのは、K さんが入院した当初は、本当に息子さんから毎日病院に電話があったそうです。トラッ ク(货车)の運転手をしていた彼は、仕事で全国を走り回っていたので、直接、病院に見舞いに来られ なかったのです。入院して以来、K さんは何度か危険な状態になったことがあったそうです。③そのたびに、看護婦さんが、「息子から電話がかかっているのよ」と声をかけると、不思議と持ち直した(见好,好转)というのです。
そんなある日、病院に悲しい電話が入りました。交通事故で K さんの息子さんが亡くなったという知らせでした。もちろん K さんの病状を心配して、④そのことは知らせないことにしたそうです。そしてその日から、看護婦さんたちの⑤幻の電話が始まったのだそうです。
1.
①「それがうそであることが、しばらくして分かりました」とあるが、何がうそなのか。A.筆者と同じ病室に K さんがいたこと |
B.筆者が K さんの息子をいい息子だと思ったこと |
C.K さんの息子が病院に電話をかけたこと |
D.K さんが息子からの電話を楽しみにしていたこと |
2.
②「看護婦さんたちがついたやさしいうそでした」とあるが、看護婦たちがうそをついたのはなぜだ と考えられるか。A.うそをつくことが楽しかったから |
B.筆者がうそをつくように頼んだから |
C.K さんの息子に病院に来てもらいたいから |
D.K さんに少しでも元気になってほしいから |
3.
③「そのたびに」とあるが、この場合、次のどの表現に最も近いか。A.K さんの息子から電話があった時はいつも |
B.K さんの病症がよくなりかけた時はいつも |
C.K さんの病症が非常に悪くなった時はいつも |
D.K さんの息子が見舞いに来られなかった時はいつも |
4.
④「そのこと」は、何を指すか。A.K さんの息子が死んだこと | B.K さんにうそをついていたこと |
C.K さんの病状を心配していること | D.K さんの病気が悪いこと |
5.
⑤「幻の電話」が始まったのは、いつからか。A.K さんが入院した時から | B.K さんが亡くなった時から |
C.K さんの息子が亡くなった時から | D.K さんの息子が忙しくなった時から |