9 . 70年以上も日本人でありながら、このごろ周りで話している日本語が判らなくなった。耳が遠くなったのかと疑われることもあるが、そればかりではなさそうだ。考えて見れば、ぼくが子どものころには50歳を過ぎた人はみんな老人に見えた。それが今や平均寿命80歳前後になってしまったのだから、生きている時間がだいぶ長くなってしまった。(ア)、若い人たちとぼくの世代にはもう60年以上の差があり、話される言葉もその間にどんどん変わってしまったのだ。
その一つは話すスピードだ。ぼくたちの世代は毎晩のテレビのバラエティ番組(综艺节目)に出るタレント(综艺明星)の話す速さにとてもついて行けない。ニュース番組でさえ、アナウンサーの言葉をテロップ(屏幕文字)で活字化しているではないか。しかも、それが役に立つことが多いのだ。また、話し言葉の抑揚やアクセントが変わってきてしまったこともあって、これも言葉を理解するのに困難を感じる原因の一つだ。
もう一つは米国流に何でも省略してしまうことだ。ぼくの育ち盛りのころは進駐米軍からPXとかCIEとかFENとかRTOとか教えられた。今だってEUとかNPOとかIT、CEOとか、頭文字によるもっと難しい省略語も氾濫している。そのスタイル(风格)を日本語でやるものだから、デパ地下とか、ファミレス、ドタキャン、ジコチュー……まるで訳の分からない略語までが飛び交っている。コメディアン(喜剧演员)の使う感嘆詞に至ってはもっと流行りすたり(时兴不时兴)が激しい。
1.
文中の「それ」の指すことはどれか。A.自分が年を取ったこと | B.日本語が簡単になったこと |
C.耳が遠くなったこと | D.自分が時代遅れになったこと |
2.
文中の(ア)に入れるのに最も適当なものはどれか。3.
言葉を理解するのに役立たないものは次のどれか。A.話すスピード | B.言葉の抑揚 |
C.言葉のアクセント | D.言葉の使用者の性別 |
4.
文中の「そのスタイル」の指すことはどれか。5.
この文章の内容に合っているものはどれか。A.筆者は60歳のお年寄りだ。 |
B.日本の高齢者は話すスピードが速いと言われる。 |
C.話している言葉は時代につれてどんどん変わってしまった。 |
D.言葉の頭文字による難しい省略語はアメリカだけで氾濫している。 |